2026.02.03

花だより 梅の花のようす

春の兆しが静かに満ち始め、梅の花がほころぶ季節となりました。
葛城北の丸の梅も、やわらかな香りをまといながら、一本一本の枝先に春を告げております。

梅にまつわる数ある物語の中でも、ひときわ優雅で情緒豊かな逸話として知られているのが、「鶯宿梅(おうしゅくばい)」 のお話です。

その昔、都の御所に植えられていた紅梅が枯れてしまい、新たな梅の木を探すことになりました。 選ばれたのは、京都のとある家の庭に咲く、見事な紅梅でした。 人々が移植のためにその梅を掘り起こそうとしたところ、家の女主は一首の歌を枝に結びつけたと伝えられています。

「勅なれば いともかしこし 鶯の 宿はと問わば いかが答えん」

「お上のご意向とあらば従うほかはありませんが、やがて戻ってくるであろう鶯が“私の宿はどこへ”と尋ねたなら、いったい何と答えればよいのでしょう」

そんな切なる想いが込められた歌でした。

この歌に深く感じ入られた御所では、紅梅を移すことを控え、その木は持ち主へと返されたと伝えられています。 歌を詠んだのは、当時名の知れた歌人・紀貫之 の娘とも伝えられ、この梅は貫之ゆかりの品であったとも語られています。 やがてこの紅梅は「鶯が宿る梅」すなわち 鶯宿梅 と呼ばれるようになり、女主は「紅梅内侍(こうばいのないじ)」の名で後世に知られることとなりました。

せわしない日々の中でも、梅の一枝に目をとめ、ほんのひととき春の気配を感じていただければ幸いです。
葛城北の丸へお越しの際は、どうぞ鶯宿梅の雅(みやび)を思いながら、梅の花をご覧いただけますと幸甚です。

 

梅、梅殿

梅、湯蔵